その手には、私が先ほど注文したカモミールシトラスティー。

シトラスの良い香りと、温かな湯気が立ちのぼるそれを「ありがとう」と舞斗から受け取ろうと私が手を伸ばした、その時。

「七彩。俺、15時までバイトだから…終わったら話したい」

小さな私に聞こえるくらいの声で言葉を紡ぐ彼の表情は、私に告白してきた時と同じ真剣な表情で…。

内心ため息をこぼしつつも思わず「…わかった」と頷くことしかできなかった。

ホッとした表情で嬉しそうに「あとでな」と去っていく舞斗。そして、私はヤツから受け取ったシトラスティーを片手に、指示された席へと腰を下ろす。

私ってば、舞斗の真剣な表情に弱いなぁ。

温かいシトラスティーを口に含むと、なんとも言えない柑橘系の良い香りが鼻腔をくすぐった。

…舞斗の匂いに似てる。

机に突っ伏して1人落ち込みつつ、結局私は舞斗バイトが終わるまでこのカフェで時間を潰すことになったのだーー…。


❥❥


「…それで話って?」

15時を少し過ぎた頃、バイト終わりの舞斗と合流した私は駅から自宅に帰る道のりを一緒に歩く。

先に声をかけたのは私から。

だって舞斗、自分から「話したい」なんて言ったくせに話しかけてこないんだもん。