よし…!

気合いを入れ直し、私はカフェ店内に足を踏み入れた。

〜♪

入口で鳴ったのは、客が来たことを知らせるメロディ。

「いらっしゃいませ〜」

先ほどまで、舞斗ににこやかに話しかけていた女の子が私の姿を見て、にこやかに接客してくれる。

そして…。

「いらっしゃいま…」そこまで口に出し、私と目が合った瞬間、舞斗が目を見開いたのを私は見逃さなかった。

「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか〜?」

ニコッと可愛らしい笑みを浮かべる女の子とは対象的に「い、らっしゃいませ」と、焦りからか口籠る舞斗。

ふーん。そういう反応なんだ…。

なんとも言えない微妙な空気が流れた。
それは、舞斗の隣に立つスタッフの女の子も感じとったらしい。

「ん?あれ、もしかして舞斗くんのお知り合いですか?」

私と舞斗を交互に見比べ、大きなパッチリとした瞳をこれでもかと言うくらい見開いて、私に問いかける女の子。

「はい。実は大学が同じなんです。でもビックリしちゃったなぁ。まさか、"笠原くん"がこのカフェで働いてるなんて知らなかったから」

クスリと微笑んだ私に「同じ大学なんですね〜!」と女の子は、声をかけてきた。

「七彩…」

「あ。注文いいですか?このカモミールシトラスティーをお願いします」

舞斗が私の名前を呟くのとほぼ同時に、女の子の方を見て注文を済ませる。

「はーい。カモミールシトラスティーお1つですね。ホットでよろしかったですか?」

「ホットでお願いします」

「承知いたしました。それではカモミールシトラスティーのホットお1つで、450円になります。出来ましたら席にお持ちいたしますので、好きなお席にかけてお待ち下さい」

言われたお金を支払い、女の子に軽く微笑みかけた私は空いている席を探し、キョロキョロと辺りを見回した。

駅前のカフェ、お昼時ということもあり店内はわりと人が多い。

どこに座ろうかと迷っていると。

「お客様、こちらの席空いてますよ」

私に向かって、そう声をかけてきたのは舞斗だった。