「お、脱反抗期?」
 次の日、俺の黒髪を触りながら親友の智也が言う。朝から、金じゃなくなった俺に先生やらクラスメイトやら、人が群がって仕方ない。
 失恋でもしたのか!と先生には心配までされたけど、黒に戻せと散々促していた本人が言うくらいだから、俺が色を抜いたことは相当な出来事だったらしい。
 失恋じゃなくてむしろその逆である。将来をまともにするための小さな第一歩。
「雪ちゃんと会った?」
「まだ」
「黒にしたこと言った?」
「それもまだ」
「反応が楽しみだな」
 智也がニヤニヤしながら言うから俺までニヤニヤする。
 早く見せたい。ほんで笑って、似合ってる、なんて言われたい。そう言われたときにはもう勢いでプロポーズまでできそうだ。