まともな食事──パンや野菜の入ったスープでさえも伯爵家で出されることがなかった彼女の胃にはきつかったようで、一口ほどしか入らなかったとレオンハルトはメイドから報告を聞いている。
 そんな様子だからいつ急変してまた体調が悪くなってもおかしくない、と彼女の具合に最大限気を遣いながら話を進める。

「コルネリア、話はできそうかい」
「はい、もちろんです」

 そう言いながらベッドの上で身体を起こして座るコルネリアだったが、その時にわずかな痛みからか顔が歪むのをレオンハルトは見逃しはしなかった。

「無理はしなくていい、横になったままでいいから」
「ですが」
「大丈夫だよ、叱ったりしない」

 わざと「叱る」という言葉で彼女の恐怖心を打ち消そうとするレオンハルトであったが、その思いが通じたのかコルネリアはおとなしく彼の言葉にしたがってもう一度シーツに入る。
 さあ、といった感じでレオンハルトは話を始めながら、前のめりになり膝の上に肘をおいてコルネリアに近づき、彼女の病状を気にして囁くほどの小声で話しかける。