どうやらレオンハルト曰く、それは新メニューらしく、それも一緒にということで二つ頼んだ。

 マスターは注文が入るとサイフォンでコーヒーを入れていく。
 正直なところこのカフェにあまり人は来ないため、お店の経営は赤字である。
 なぜそんな状態でも彼が趣味の範囲であるカフェを経営して生活できるのかというと、本来の彼の仕事は別にあるからだ。

「マスター、この子がコルネリア」
「ああ、知っている」
「さすが、王家の影は情報が早いですね」

 コルネリアは首をかしげてレオンハルトのほうを眺めている。
 レオンハルトはまあ、周りに誰もいないし大丈夫かといった感じで見渡すと、少しコルネリアに顔を近づけて小声で言った。

「王家の影っていうのは、王族の命で街に他国の者がいないか、つまりスパイを見つけたりする役割を持ったりする。他にもいろいろ王家のために動くんだけど、とにかく腕が立つからコルネリアも気をつけて」
「は、はい……」

 コルネリアはもう一度マスターのほうをちらりと見るが、細身で高身長ででも確かによく見ると目つきは鋭い。