自分が選んでよいと思っていなかったコルネリアは戸惑ってしまい、思わずレオンハルトの顔色を伺う。
 彼は好きなものを選んでおいで、というように伝えるとコルネリアに優しい微笑みを投げかける。
 コルネリアはゆっくりとドレスのほうに近づいて、左から順番に目を通していく。

(どれも綺麗で素敵で選べません……)

 そう心で思うのも無理はなく、ここの仕立て屋は町一番と評判であり、さらに貴族でも王族や公爵家御用達のお店であった。
 値も張るが、それだけ素晴らしい品とサービスを揃えており、ヴァイス家も代々ここの仕立て屋に世話になっていた。

(このドレスが気になりますが、いいのでしょうか)

 まだどうしても遠慮がちになるコルネリアの様子に気づいたオーナーの妻は、さっとコルネリアの視線の先にあったドレスを手に取って彼女に合わせてみせる。
 鏡を見ると、まるで自分ではない、というような感覚に陥るほどコルネリアにとって素晴らしくいい品だった。
 そのドレスは、華やかさはそこまでではないが、ちらりと見える部分に花の刺繍が施されている白を基調としたドレスであった。

(可愛いですね、このドレス)