「お前に身請け話がきた。こい」

 そういってコルネリアの意思も聞かず、無理矢理そのやせ細った腕を引っ張って地下牢から出る。

「──っ!」

 彼女は12年ぶりに日の光を浴びて、身体を思わずびくりとさせる。
 そんな様子も気にせず、引きずるように伯爵は玄関のほうへと彼女を連れていく。


 玄関にはすでに馬車の用意がされていて、伯爵はコルネリアをその中に乱暴に放り込む。

「お前みたいなやつでも何も持たなくていいと言ってくださっている、お前はそのまま公爵様のところへ向かえ」
「かしこまりました」

 コルネリアはその「公爵様」のところに行けばいいのだとだけ理解をし、返事をする。
 馬車の扉が閉まり、馬が走っていく。


 初めて乗った馬車にも特に何の疑問も持たず、おとなしくコルネリアは座っている。
 変わりゆく景色を眺めるでもなく、身なりを整えるわけでもなく、ただただ馬車に揺られ乗っているだけ。

 そうして数時間乗った馬車は日が落ちる頃に公爵邸へと着いた。

 馬車の扉がゆっくり開くとそこには執事……ではなくとても身なりのいい男性がいた。

「いらっしゃい、こちらへ」