楽しんで生きるという当たり前なことでも、コルネリアはしばらくそういう生き方をしたことがなかった。
 孤児院でいた時は比較的幸せに生活をしていた。
 シスターにご飯を食べさせてもらい、育ててもらって、そして他の子供たちとも触れ合って生きてきた。
 ルセック伯爵家に引き取られたすぐは、なんて美味しご飯なんだろうかと感激するほどの食事を出されたり、メイド達が甲斐甲斐しく世話をしてくれたりした。
 しかし、それも長くは続かず、結局は聖女としての力を失ったコルネリアをルセック伯爵は地下牢に閉じ込めて冷遇してしまった。

 でも、レオンハルトとなら楽しく生きることができるかもしれない。
 先日の離婚を申し出た時に彼に言われた言葉がコルネリアの頭の中をよぎる。


『君だから良い。僕は、君だから好きになった。僕の隣にいるのは君しか考えられない』


 そんな風に言われたのは初めてだったが、コルネリアが自分自身を愛する以上の愛をレオンハルトが彼女に向けていることをその言葉からひしひしと伝わった。
 コルネリアは少し考えてレオンハルトのサファイアブルーの瞳を見つめて告げる。