しかし、彼女にとってそれからの時間は苦いものとなる──
アスマン公爵はヴァイス家の執事の案内で応接室に通され、青いベルベット生地のソファに腰をかけて待っていた。
コルネリアはドレスの裾を持って挨拶をすると、そのまま公爵の向かいに座る。
執事はアスマン公爵の前、そしてコルネリアの前に紅茶を置くと、そのままコルネリアの少し後ろに控えるように立った。
「お初にお目にかかりますなあ、ご夫人」
「ご挨拶が遅くなりました、コルネリアと申します」
表情もなく真っすぐにアスマン公爵を見つめて名を名乗ると、公爵はそれは優雅に紅茶の香りを嗅いでゆっくりと飲み始める。
かなり年を召しているのか、杖を横に携えており、髭を整えながらコルネリアを品定めするように見つめてくる。
普通の令嬢であればそこまでまじまじと見つめられて、しかも少々眉をひそめながら嫌なものでも見るかのようにされると居心地が悪いが、コルネリアにとっては特に何の不快感もなかった。
それほど彼女の感情の欠け落ちは残ってしまっている。
「ヴァイス公爵はいらっしゃらないのだろうか」
「夫は仕事で王宮に出ております」
アスマン公爵はヴァイス家の執事の案内で応接室に通され、青いベルベット生地のソファに腰をかけて待っていた。
コルネリアはドレスの裾を持って挨拶をすると、そのまま公爵の向かいに座る。
執事はアスマン公爵の前、そしてコルネリアの前に紅茶を置くと、そのままコルネリアの少し後ろに控えるように立った。
「お初にお目にかかりますなあ、ご夫人」
「ご挨拶が遅くなりました、コルネリアと申します」
表情もなく真っすぐにアスマン公爵を見つめて名を名乗ると、公爵はそれは優雅に紅茶の香りを嗅いでゆっくりと飲み始める。
かなり年を召しているのか、杖を横に携えており、髭を整えながらコルネリアを品定めするように見つめてくる。
普通の令嬢であればそこまでまじまじと見つめられて、しかも少々眉をひそめながら嫌なものでも見るかのようにされると居心地が悪いが、コルネリアにとっては特に何の不快感もなかった。
それほど彼女の感情の欠け落ちは残ってしまっている。
「ヴァイス公爵はいらっしゃらないのだろうか」
「夫は仕事で王宮に出ております」