「はあ……はあ……危なかった……」
「ご、ごめんなさい」

 そうすると、レオンハルトは彼女を抱きしめて耳元で囁く。

「ドキドキしてるね」
「そ、それは、溝に落ちそうになってびっくりしたから……!」
「ふ~ん、本当?」
「ほんとっ!!」

 もう離れてよ、と言いながら彼の胸板を押すも、全く解放される気配はない。
 彼女は少し言いづらそうに顔を逸らしながら、もごもごとして言う。

「……るから」
「え?」
「汗が気になるから、恥ずかしい……」

 先程の手を離したのも、手汗を気にして自分から離れたのだとわかり、レオンハルトは自分の行動を少し反省する。

「ごめん、僕のほうこそコルネリアのこと気にしてあげてなかったね」
「ううん、その、どめんなさい。嫌いになった?」
「なるわけない。でも、嫌ならもうくっついたりしないから」
「……」

 コルネリアは何か言おうと顔をあげた。
 その瞬間、轟音が響き渡り夜空が一気に明るくなる。

「あ……花火……」
「河原まで間に合わなかったね……」
「いいや、ここでも十分見られた」

 そう言うレオンハルトの横で必死に背伸びをしてみているコルネリア。