「レオンハルト様、暑いです……」
「コルネリアっ! 身分がバレてしまうから『様』と敬語はなしって言ったでしょ」
「でも、レオンハルト様はレオンハルト様だし……」

 人混みでごった返す中、暑さでうだってしまっているコルネリアの手を引いて目的の河原まで向かう。
 由緒正しい家柄の二人はボディーガードに普段守られて過ごしているが、どうしても二人きりでデートがしたいとこの人混みを利用して振り切ってきたのだ。
 暑さに弱いコルネリアは手で仰ぎながら身体を冷まそうとするが、それでも汗はじんわりと滲んでくる。

「私は大丈夫だから、手を離しましょう。レオンハルト様!」
「え?」

 そう言って無理矢理手を離してしまうコルネリア。

「あ、あそこ涼しそうっ!」
「ちょっと、待ってっ! そっちは……!」

 コルネリアが走って行った先は脇道で、大きな溝があった。

「──っ!」

 気づいた時にはもう手遅れで、コルネリアはバランスを崩して足を踏み外してしまう。
 地面に倒れてしまう、と想い衝撃を覚悟するも、力強い腕に引っ張られて痛さは訪れない。