もはやコーヒー風味のミルクではないか、とリュディーは思うのだが、彼女からの鉄拳が怖いので口にしない。

「ほら、できたぞ」
「わあっ! 可愛い!! なにこれ!!」
「ラテアートだ」
「らてあーと?」
「こういうコーヒーの泡にチョコで絵をかく。そういう芸術だ」

 クリスティーナはカップをそっと持ち上げて、描かれたアートをまじまじと見つめる。

「ねえ、なんでくまさんなの?」
「ん? ……可愛いから」

 何を描こうかと思ったが、先程まで一緒にいた強面の熊のようなガタイのいい国王がちらついて思わず描いてしまったと言いづらかった……。
 可愛い、可愛いと連呼しいながらも、名残惜しそうにカップに口を付ける。

「美味しいっ!!」
「だいぶ甘くした、どうだ?」
「う~ん。なんか、ふんわりはちみつじゃないのがあるような」
「よくわかったな。桃だ」
「もも?」

 この時期には王都近くの畑では桃がよくとれる。
 献上品として先日届けられたものをジャムにして使用したのだという。

「これも好き!」
「ああ、夏限定だ」
「ふふ、コルネリアにも飲ませてあげたいっ!!」
「ダメだ」
「え?」