テレーゼはノックをして慌てた様子でコルネリアの部屋に入ると、ベッドの上に座っていた彼女に訪問者のことについて早口で言い始める。

「コルネリア様っ! 実はアスマン公爵がいらっしゃっているのですが、いかがいたしましょうか」
「え? 公爵様が?」

 公爵という言葉を聞いて偉い人だとすぐに判断した後、脳内ではすぐに自分はどうすればいいのだという思いがよぎる。
 いつも対応していたであろうレオンハルトも今しがた仕事に出たばかりで、彼の側近と聞いているミハエルもいない。
 家の中には「ヴァイス公爵夫人」という立場である自分と使用人たちしかおらず、どのように対応すれば良いのかと考えた。
 コルネリアは息を切らせながら自分に公爵の訪問を報告したテレーゼの背中をさすって落ち着かせると、廊下のほうへと向かう。

「コルネリア様?」
「ひとまずご用件を伺いにまいりましょう。緊急事かもしれません」

 貴族生活の少ないコルネリアだったが、昔教会のシスターが訪問者を歓迎していたことを思い出し、自分もひとまず来客の対応をすることにした。