孤児院にいたのは2歳までだったからそのくらいは当然だろう。
 忘れていた人の温かみを思い出して、コルネリアの心がドクンと一つはねた。


 その後仕事に出かけたレオンハルトを見送ると、コルネリアは自室に戻って窓の外を眺める。
 本もあまり読むことができない──文字の読み書きに苦手意識があった彼女は、本棚にあるたくさんの本を読むのではなく外にある草花を見つめて孤児院を思い出していた。

(孤児院にいた、私。よく外に遊びに出て……)

 幼かった頃の記憶を手繰り寄せながらぼうっと外を眺める。


 コルネリアが窓の外を眺めている頃、ヴァイス公爵家の玄関に一人の訪問者がやってきていた──