彼らの悪口に対して一向に反論せずに黙って聞いているだけの彼を見て、思わず身体が動いた。

「やめなさい」
「──っ!! 王女殿下……!!」

 ひれ伏して頭を下げる彼らに、彼女は唇を一度噛みしめた後、強い目を向けた。

「私が命令したのです。彼に、名前で呼ぶようにと。ですから、彼を侮辱することは、私を侮辱することと同義。あなたたちは王族を侮辱するのですね?」
「そ、そんなっ!! 滅相もございません!! 大変申し訳ございませんでした」
「わかったら、さがりなさい」
「「「かしこまりましたっ!!」」」

 リュディーを侮辱した彼らは一目散に逃げるようにその場を去った。

「なぜ、あんなことを?」
「……実際、命令したものよ。あんなの」

 彼女は唇を震わせる。
 喉の奥がつんとしてもう話せない。

(早くここから立ち去らないと……)

 クリスティーナはリュディーに背を向けて歩いたところで、持っていた荷物がふわりと浮き上がる。

「──?」
「持ちます」
「でも。あなた今から仕事じゃあ……」
「あなたの傍にいたいんです」
「──っ!!!」