(伝えることは、できない……)

 俯いて視線を逸らした後に、彼女は再び公務へと向かって行った──



 彼と会わなくなってから数年後、クリスティーナは一人娘であったこともあり、忙しく国王と王妃の公務の手伝いをしていた。
 そんなある日、国王は食事の席で彼女に伝えた。

「今日から彼がクリスティーナの護衛騎士だ」
「え……?」

 王族には護衛騎士がつくが、彼女は監視されているみたいで嫌だからと、王宮から出ないということを条件に専属の護衛騎士をつけずにいた。
 護衛騎士をつけると聞いて、すぐさま断ってやろうと思ったのだが、その”彼”を見て声が止まる。

「リュディー……」
「ご無沙汰しております。王女殿下」
「え、ええ……」
「リュディーは騎士団長のレオンハルトの右腕でもある。お前もずっと護衛騎士はつけたくないということだったが、いずれそうもいってられなくなる。まずは少しずつでも慣れてみてくれないか」

 突然の再会で頭が混乱しているのを必死に隠しながら、彼女は国王に了承の返事をした。
 相変わらず笑わない彼は、クリスティーナを目が合うと、そっと手を胸に当てて頭を下げる。