その瞬間、彼女の唇に何かが触れた。

 そっと、目を開けると、目の前にはレオンハルトの麗しいシルバーの髪、そしてその奥からサファイアのような瞳に見つめられている。

「──っ!!」
「ほら、もう夜だ。日は落ちたよ」

 窓の外に視線をやると、もう日が落ちている空が見えた。
 次第にその空は歪んできて、焦点が合わない。

「ほら、泣かないの」
「だって、呪いが……解けて……よかった……」

 細く長い指先で頬を伝う涙を拭われると、コルネリアは思いきり彼の胸に飛び込んだ。

「レオンハルト様……よかった……」
「うん、ありがとう。コルネリアのおかげだよ」
「いいえ、私はあなたに救われてばかりです。今も、昔も」
「ふふ、それは僕のほうだよ」

 二人は額をこつんと合わせて笑みをこぼすと、目を合わせる。

「コルネリア、一生傍にいて?」
「はい、私はずっと、ずっとあなたの傍であなたを好きでいます」
「ふふ、大好き。僕の可愛い奥さん」
「レオンハルト様、私の全てを受け取ってください」
「ああ、全てを奪わせて。僕に」

 そっと囁いたその声への返事は、彼の唇に塞がれて言えなかった──