ひるんだ腕を振り払い、その人物はクリスティーナの腕を引いて自らの後ろに下がらせる。
 彼女は自分の腕を引いて守るようにして背に隠した彼の名を呟いた。

「リュディー……」
「遅くなってしまい、申し訳ございません。クリスティーナ様」

 クリスティーナを守るようにしっかりと手を繋ぎながら、ゆっくりと陸の方へと足を向ける。

「くそっ!! 王女を奪えっ!!」

 リストの叫びに呼応するかのように、船の中から凄まじい数の衛兵がリュディーとクリスティーナを襲う。
 気づけば陸にいたミストラル国の人間からも追い詰められており、まさに挟み撃ちとなっていた。
 リュディーはちらりと双方の敵を見遣ると、クリスティーナに囁く。

「クリスティーナ様、私から離れぬよう」
「でも、こんなに囲まれてちゃ……」
「大丈夫です、あなたは必ず命に代えても守ります」
「リュディー……」

 リュディーはナイフを手に向かってきた敵をひらりと交わすと、その手を上から手刀で殴りつける。
 そのまま回し蹴りをして相手をもう一人の敵にぶつけると、二人まとめて海に突き落とす。