馬を必死に走らせてなんとか港についた二人は、馬車の扉を勢いよく開けて飛び出る。
 港にはすでに豪華客船が止まっており、大勢の人が集まっていた。

「レオンハルト様っ!!」
「ああっ!!」

 視線の先にはクリスティーナがちょうど、第二王子リストと思われる男性の手を取るところが映る。
 婚約するめでたい二人を取り囲み、言わっている群衆に向かってコルネリアは叫んだ。

「クリスティーナ様っ!!! 行ってはなりませんっ!!!」
「コルネリア!? それに、レオンハルトまで……」

 彼女は呼びかけに応じて足を止めるが、リストは何かを察知したようにクリスティーナの腕を無理矢理引いて船に乗ろうとする。

「まずいっ!」

 船の中に入られてしまいそのまま出向すると、彼女はもうミストラル国の人間になってしまう。
 そうなれば彼女を連れ戻すことは容易ではない。
 コルネリアとレオンハルトは必死に駆け寄るが、二人はすでに可動橋に差し掛かり、間に合わない。

(ダメ……間に合わない……!)

 コルネリアが唇を噛みしめたその時、群衆から抜け出した一人の人物がリストの腕を蹴り飛ばした。

「──っ!!」