しかし、ルセック伯爵夫妻はコルネリアを金の道具にして使い、挙句の果てに力を失った彼女を虐げて地下牢に閉じ込めてしまった。
 彼女はその瞬間に一度、死んでしまったのだ。

「あなたが力を失ったのは、あなた自身がその力を閉じ込めているから」
「え……?」
「力を出すことを拒んでいるのよ。あなた自身が。きっとあなたの中で何かあったはず。心を閉ざすことになった何かが」
「──っ!!」

 その瞬間、コルネリアの頭の中に誰かの声がこだまする。


『お前の力は本当は人を不幸にしている』


(誰……? どうしてそんなことを……)


『お前が治した患者は昨日死んだ』


 その声はどんどん大きくなり、やがて彼女自身の脳内であの日の記憶がよみがえった。
 ルセック伯爵邸に来た一人の男は、自分の耳元で毎日囁いていくのだ。

 毎日。毎日──
 来る日も来る日も、治療を受けては耳元で囁き、少女の心を壊していく。

 少しずつ、少しずつ。
 それはやがて少女の心を完全に打ち砕き、神聖な力を出せなくなるほどに。

(そう、あの人にいつも何か言われて、それで、私は聞かないフリをした)