『お前の力で人が死んだ』


 と。
 前日にある老婆を救えなかった少女は、自分のせいだと思い込んだ。
 そう、そうして彼女は自分の力を自分で封じてしまったのだ。


「少女はそうやって少しずつ心を閉ざして、自分の力が忌々しいものだと思い込んでしまった。そして自分で制御をしてしまった」
「……」
「聖女の力を失ったことを見届けると、口封じのためにあなたはその少女に暴言を吐いた部下を事故死に見せかけて殺した」
「そんな、どこに証拠が……っ!」

 カリート伯爵が目の前の光景にぞっとしたのも無理はない。
 椅子の上からレオンハルトが人の白骨化した頭の骨を持って見せてきたからだ。

「ひいいっ!!」
「部下の遺骨が埋められていましたよ。あなたの家の庭に……」
「なっ! そんなはずはない。だって……っ!」
「ふふ、だって。なんですか? 海に捨てたから、といいたいんですか?」
「……」

 レオンハルトはそっとその頭蓋骨に布をかけると、丁重に机の上に置く。

「実は、あなたの部下を始末するように指示した殺し屋は、私の友人なんですよ」
「──っ!!」
「あ、大丈夫ですよ。この骨は偽物ですから」