「そうですね。そうもしないとあなたのまわりの”護衛”とあなたを引き離すことはできませんでしたしね」
「……どういうことですかな?」

 レオンハルトは椅子から立ち上がると、彼に近づいてこっそりと話すように言う。

「おや、もう気づいておいででは? ”私”がここにいる意味を。あなたのような賢い方なら」
「恐れ入りますが、わたくしにはわかりかねます」
「単刀直入にいいます。私の妻、コルネリアに近づき、彼女にあることない事吹聴したのはあなたの部下ですね?」
「……! おっしゃっている意味がわかりません」
「こちらは証拠を掴んでおります。あなたは当時政敵であったルセック伯爵の台頭が邪魔だった。そして調べるうちに聖女の力を悪用して富と名声を得ている事に気づいた」
「そうです。彼は彼女を虐待していたっ! 私は聖女であるコルネリア様を救おうとしたのです!」

 開き直ったように、そして自分が正しいと宣言をするように高らかに宣言する。
 レオンハルトはそんなカリート伯爵を見て、一瞬唇とピクリと揺らすと、冷たい視線を彼に向けた。