彼の頭の中には、クリスティーナの言葉がよみがえっていた。


『聖女の力は正義と悪、表裏一体なの』
『表裏一体?』
『皆、聖女は神聖なものだと信じている。けれどそうじゃない、人より優れた力を持つこと、それすなわち”暴力”なのよ。それをどう使うかはその人次第。だから、教会で教育をする。正しい使い手となるために。聖女が悪の道に染まらぬように──』


(悪の道……)

 コルネリアの聖女の力が少しずつ回復していたのはわかっていたが、彼女の力はもともとは数百年に一度の力とよばれるほど強大なもの。
 では、それがもし悪に舵をきってしまったのだとしたら?
 目の前で人形のように表情を失くしてこちらを見つめる彼女を見て、レオンハルトは拳をテーブルに打ち付ける。

(僕の過去が、コルネリアに負担をかけたのだとしたら? 彼女の気持ちを壊したのは僕だ)

 レオンハルトの拳はテーブルによって傷つき、赤い血が滲んでいる。

(僕はまた悲しませるのか。愛する人を、守れずに……!)

「──っ!!」

 コルネリアは聖女の力を使ってレオンハルトをついに攻撃し始める。