「アンネ、これ可愛くないか?!」
「まあ、ぬいぐるみですか。しかもこれはアイシール織物ですね」
「あいしーる?」
「天然の綿で作られ、独特な編み込みがある織物で、最近女性に人気なのですよ」
「そうなのか、よかった、これならレオンハルトも……」

 てっきりダーフィットは妻に褒められると思って、嬉しくなって表情を明るくした。
 しかし、彼女から返ってきた返答は自分の予想とは違ったものだった。

「女性の流行りのものをご存じだなんて、どこかのご令嬢にでも教えていただいたのですか?」
「え?」
「最近ご帰宅時間が遅かったと思いまして」
「ち、違うっ! 違うっ!! 決して浮気じゃない!!」
「あら、わたくしは浮気だなんて一言も言っておりませんわ。やましいことでもあるのですか?」
「俺はお前しか愛していない!! お前が好きなんだ!!」

 部屋中に、そして廊下にも響き渡る愛の言葉。
 冷静に聞いている眼鏡をした執事、口元に手を当てて笑うメイド、意外にも皆驚かずに聞いている。

「ふふ、私も好きですわ。ダーフィット様」

 そう言って、ぴとりと彼の胸元に身体を預けるアンネ。