もちろん盗み自体は良くないのだが、証拠も不十分、そして今回ルセック伯爵の不正資料も一緒に提出をして自首をしたため、おそらく彼女は不起訴となるだろうとのことだった。

「さあ、私の大事な妻への酷い仕打ち、暴力、そして国への反逆、その他不正行為の数々……ここまで揃うのも珍しいですね。さあ、国王いかに裁きましょうか?」

 もはやルセック伯爵は言い訳できないと言った様子で観念しているが、その横でピーピーと伯爵夫人は騒ぎ立てている。

「これは全て夫がしたことですわっ! わたくしは何も悪くありませんもの! 裁くなら夫だけをさば……」
「黙れ」
「ひぃっ!!」

 国王の威厳のある低い声、そしてその圧力に負けて夫人は腰が引けている。
 先ほどまでの威勢はどこへやらと言った様子で、何も言えずにわなわなと震えていた。
 まるで、怪物を見ているがごとく──


「ルセック伯爵ならびに、伯爵夫人両名は、国家に対して、そして大事なこの国の民に対して信頼を損ない行動を起こした。よって、法によって裁きを下す」

 国王は玉座から立ち上がって右手を掲げ、こう宣言した。