ニアはそんなヒルダの態度に謝罪をするも、コルネリアは首を振って去っていくヒルダの背中を見つめる。
 自分の影響で誰かが傷ついている、誰かが不幸になっている、悲しんでいる──
 そんな事実を受けて、コルネリアはなんとかしたい、そう思った。

 レオンハルトから受けた教会での仕事、そして孤児院での子供たちとの交流の中でそこに住む彼女たちの環境をよくすることが何より最優先事項だと考えた。
 コルネリアはまず今日の訪問で自分の故郷を見つめ、現状を知り、そしてどんな問題があるのかを確認した。
 それと同時に、コルネリアは避けて通れない存在を認識する。

(お父様……)

 ルセック伯爵とコルネリアの再会が近づいていた──



◇◆◇



 薄暗い礼拝堂の中で、レオンハルトとシスター長は神妙な面持ちで話をしている。

「シスター長の……?」
「はい、この老いぼれの手は今日薔薇の手入れで大変に傷ついておりまして、それがこのように」
「治った、と」
「はい、コルネリアと再会して触れ合った瞬間から痛みが引きました。おそらくは……」
「聖女の力が戻ってきていると……?」
「そう、考えられます」