というのも、このヒルダという勝気な少女が今この教会で預かっている子供の中で最も強い力を持つ聖女だったからだ。
 彼女は幼い頃のコルネリアほどではないにしろ、近年稀に見るほどの強い力を持った子であったが、貴族や王都の富裕層たちは彼女のことを冷たい目で見ていた。
 それはルセック伯爵がコルネリアのことを「災いをもたらした聖女」として強く批判をして、噂を流したから。
 散々コルネリアの神聖な聖女の力を利用して、そして力尽きたら用済みとして死んだことにしただけでなく、彼女の評判までを落とした。
 その評判を信じた貴族たちや商人などは教会の聖女たち、特に一際力の強かったヒルダの聖女としての素質を疑って、陰口を言うようになった。
 もちろん、王族の息のかかった教会や孤児院であるがゆえに、おおっぴらには非難しないが……。

 つまり、ヒルダとしては自分たちが苦しい思いや批判を向けられるようになったのは、コルネリアのせいだといっていたのだ。
 コルネリアもその事情、そして自分自身が突然聖女の力を失ってしまったことに対して、そしてそれが理由で子供たちに非難の声が向けられることに心を痛めた。