「この役立たずがっ!!」
「──っ! 申し訳ございません」

 少女は殴られた自分の頬や乱れた淡いピンクの長い髪を気にすることなく、今目の前にいる父親に謝罪をする。
 その力なき声は地下牢の冷たい冷たい壁へと虚しく消えていくだけ──


「次しくじったらこの程度じゃすまないからなっ!!」
「かしこまりました……」

 彼女の父親は牢屋の鍵を閉め、コツコツと靴を鳴らして入り口の扉を荒々しく開けるとそのまま出て行った。

 その様子を見て、彼女は冷たい床についた顔をそっとあげて小さな小窓から差し込むわずかな光を眺める。
 虚ろでどこに視点が合っているのかわからないような、そんな様子の彼女の瞳はひどく濁っていた。
 この少女の名前はコルネリア・ルセックという。



 15年前──。

 長年子に恵まれなかったルセック伯爵と伯爵夫人が教会からある聖女をもらいうけた。
 その聖女はわずか2歳にしてわずかながらも傷の治療をしたことから、聖女の中でも数百年に一人の逸材と言われていた。

「この子にしましょう! 淡いピンクの髪で可愛いわ!」