普段の彼とはまた違う、整った顔立ち故にその真剣さ漂う様子がより緊張感を増していた。
 エリーヌは自分から求めるのではなく、彼が話し始めるのをじっと待つ。
 そうして時計の針がカチッと鳴った後、アンリは両手を絡めて膝に肘をついてその沈黙を破った。

「ルイスの部屋に行ったのかい?」
「はい、たまたま壁の扉を開けてしまい、入ってしまいました。申し訳ございません」
「いや、謝る必要はないよ。いずれ話そうと思っていた。遅くなってしまってごめん」

 彼はエリーヌに膝を向けると、深々と謝罪をした。

「しばらく会っていないんだ。彼には。彼に合わせる顔がなくてね」

 アンリはエリーヌの青い瞳を見つめると、少しだけ笑った。

「どこまで聞いたの?」
「ルイスさんの目の事。それから、ご両親の事。裏庭にあるお墓もご両親のものだって」
「そうか、あの子は君を信頼して話したんだね」

 アンリは少し嬉しそうな表情を浮かべる。
 その顔は家族を思いやる顔で、そして兄の顔のようにエリーヌには思えた。


『どうか兄さんを救ってください』


 彼の懇願するような言葉が彼女の脳内に流れる。