「『聖騎士オーギュスト反逆事件』をご存じですか?」
「あの、王宮の夜会での反乱事件のことですか?」
「ええ」

 当時の聖騎士と呼ばれる王宮騎士の中の名誉騎士として君臨していた、オーギュストが王族に対して反乱を起こした事件。
 その反乱はすぐに鎮圧されたものの、夜会に奇襲がおこなわれたため、多くの貴族が命を落とした。
 その後、オーギュストは処刑され、協力者たちも牢獄に入れられたり、永久追放となった。

「その犠牲となった中に、私達の両親はいました」
「──っ!!」

 エリーヌは絶句してそのまま口元を抑えながら、思わず手が震えてしまう。
 彼自身も思い出したのか、顔を歪めながら目を閉じて涙を堪えるように語った。

「元々は、その夜会には兄さんが行く予定だったのです」
「アンリ様が……」
「兄さんは両親が巻き込まれて亡くなったことを知ると、自分を責めました」

 彼の心情を慮ってエリーヌも言葉が出ない。
 どれだけ辛かったろうか、自分の代わりに犠牲になってしまった。
 それも両親を死なせてしまったという罪の意識は計り知れない──