「その澄ました顔が大嫌いなのよっ! なんでもそうやって無欲なふりして手に入れて……でも、もう終わりね? あなたはもう歌姫としての地位を失った。それに婚約者も私のもの」
高いハイヒールを鳴らしながらドアのほうへと歩みを進めていく。
そして扉に近づいた時に、あっとわざとらしい声をあげた後にエリーヌに告げた。
「あなたを獄に入れるのは面白くないから、あの『毒公爵』に嫁ぐように私からゼシフィード様に進言しといたから。明日にはそうなってるかもね。ふふ、『毒』で私を殺そうとしたあなたにぴったりじゃない!」
ふふ、と口元に手を当てて笑った後、こらえきれないという様子で声をあげながら去って行った。
(毒公爵……あの、毒の研究で引きこもってるっていうあの噂の……?)
『毒公爵』と悪名高い名がつけられたその人は、アンリ・エマニュエルといった。
彼は社交界や王族関係式典などにも滅多に姿を見せず、さらに危ない毒物の研究をひっそりとやっているということで、人々は良い噂をしない。
エリーヌ自身は一度だけ遠めに式典の際に見たことがある。
高いハイヒールを鳴らしながらドアのほうへと歩みを進めていく。
そして扉に近づいた時に、あっとわざとらしい声をあげた後にエリーヌに告げた。
「あなたを獄に入れるのは面白くないから、あの『毒公爵』に嫁ぐように私からゼシフィード様に進言しといたから。明日にはそうなってるかもね。ふふ、『毒』で私を殺そうとしたあなたにぴったりじゃない!」
ふふ、と口元に手を当てて笑った後、こらえきれないという様子で声をあげながら去って行った。
(毒公爵……あの、毒の研究で引きこもってるっていうあの噂の……?)
『毒公爵』と悪名高い名がつけられたその人は、アンリ・エマニュエルといった。
彼は社交界や王族関係式典などにも滅多に姿を見せず、さらに危ない毒物の研究をひっそりとやっているということで、人々は良い噂をしない。
エリーヌ自身は一度だけ遠めに式典の際に見たことがある。