慎重にドアノブに手をかけて扉をあけると、そこには年季の入った椅子が目の前にあった。
 よく見ると、背もたれの部分から頭が少し覗いている。

(誰かいる……?)

 エリーヌはその人物に夢中になっており、気づかなかった。
 椅子に座ったその人が鏡越しにエリーヌの姿を確認していたことを……。

 エリーヌが回り込んで顔を確認しようとしたその時、椅子から彼は立ち上がった。

「──っ!!」

 振り返った彼はシルバーの髪、そうしてルビーのような丸い瞳をしてエリーヌを見つめていた。

「待っていましたよ、お姉様」

 エリーヌより背の高いその男は、彼女に向かって手を差し出して歓迎した──