少し会釈をすると、女はそのまま去って行った。

 倉庫に残った彼は一人、部屋の中にある本や絵画、そしてアンリの研究道具の一部を眺める。
 その横に伏せるように置かれていたアルバムの埃を払うと、そっとめくって中身をみる。

「不思議なご縁ですね、ベルナール様、クロエ様」

 ベルナール宛に書かれた手紙を手に取って裏返す。


『遠く離れた友人たちへ フェリシー・ブランシェ』


 手紙はそっと再びアルバムの中へと戻された──