「痛いっ!!」
「おとなしくここにいろっ!!」

 衛兵に王宮にある牢屋に入れられたエリーヌは、冷たい床に座り込む。
 もう一度歌を歌おうとしても奏でられない──

 夜会も終えた頃であろう時に大きく重い牢屋に入る扉が開いた。
 眩しい光に思わずエリーヌは目を細めて、少し視線を逸らす。

「まあ、無様ね」
「ロラ……!」
「どう? 歌声も失って、婚約者も失って、何もかもなくした気分は~?」

 真っ赤なルージュを大きく開きながら嬉しそうに笑みをこぼしていうロラに、エリーヌは問いかける。

「あなたがしたの……?」
「ええ、そうよ。満足いただけたかしら?」
「何でこんな、こんなこと」
「あなたは親友と思っているのかもしれないけれど、私は一度もそう思ったことないわよ。あなただけよ。もう親友ごっこはお・わ・り」

 人差し指を牢屋の中に向けて楽しそうに言うロラ。

(そうか、ロラが……。ロラが全てやったの……)

 悟りを開いたような、全てを悟ったようなそんな表情を浮かべるエリーヌに、ロラは苛立ちを隠せない。