青い瞳と紫の瞳の視線が合わさって、エリーヌは一瞬時が止まったような気がした。
 端正で整った顔立ちの彼にじっと見つめられて、思わず吸い込まれそうになる。

「エリーヌ、俺は怒ってる」
「……え?」
「君が俺を頼ってくれなかったこと。怒ってる」

 先程までの整った表情は少しむすっと不満そうに歪められ、そうして口をとがらせて目を逸らしている。
 エリーヌは子供みたいな反応をする彼に戸惑っていると、今度はアンリが彼女にぐいっと顔を近づけてきた。

「──っ!」
「いい? 今から怒るからね?」

 そう宣言した彼はゆっくりと椅子から立ち上がると、すうっと息を吸ってエリーヌに捲し立てる。

「あのね! 俺のいない間に王宮夜会に一人でいくなんてどうしてそんなことしたの!? 招待状はゼシフィードから来たらしいっていうじゃない? 俺には来てないよ!? 明らかに策略だよね、元婚約者のやる範疇超えてるよ! 絶対危ないことになるのわかってたでしょ!?」

 あまりの饒舌さにエリーヌもぽかんとしてしまっている。
 だが、彼の口撃はおさまらない──