エリーヌが履きなれたヒールをかき鳴らして第一王子ゼシフィードの元へと向かった後も、まわりの悪態は尽きない。
扇の裏でひそやかに繰り広げられる美しくない会話に、エリーヌは凛とした面持ちで立ち向かう。
ゼシフィードは金色の髪をかきあげてエリーヌの瞳を見つめた。
「ふん、どうだ。あの『毒公爵』のもとは?」
「ええ、それはそれは心穏やかに過ごさせていただいております。殿下のおかげでございます」
品よくそうしてわざとその形のいい唇で笑みを浮かべる。
元婚約者の面白くないその表情を見た彼は、こめかみのあたりをぴくりとさせて一瞬だけ嫌そうな顔をした。
その瞬間、会場は少し薄暗くなり、ゆっくりとしたバイオリンの音色が響き渡る。
それを合図に皆手を取り合って音楽に合わせて踊り出した。
すると、ゼシフィードはエリーヌに手を差し出す。
どういうつもりなのかわからず、一瞬戸惑っていると、彼は挑発するように言う。
「この第一王子の誘いを断るというのか?」
確かに今回の夜会でのエスコートはゼシフィードとなっていた。
扇の裏でひそやかに繰り広げられる美しくない会話に、エリーヌは凛とした面持ちで立ち向かう。
ゼシフィードは金色の髪をかきあげてエリーヌの瞳を見つめた。
「ふん、どうだ。あの『毒公爵』のもとは?」
「ええ、それはそれは心穏やかに過ごさせていただいております。殿下のおかげでございます」
品よくそうしてわざとその形のいい唇で笑みを浮かべる。
元婚約者の面白くないその表情を見た彼は、こめかみのあたりをぴくりとさせて一瞬だけ嫌そうな顔をした。
その瞬間、会場は少し薄暗くなり、ゆっくりとしたバイオリンの音色が響き渡る。
それを合図に皆手を取り合って音楽に合わせて踊り出した。
すると、ゼシフィードはエリーヌに手を差し出す。
どういうつもりなのかわからず、一瞬戸惑っていると、彼は挑発するように言う。
「この第一王子の誘いを断るというのか?」
確かに今回の夜会でのエスコートはゼシフィードとなっていた。