ロザリアによると、夜に日用品の補充の為に倉庫に向かったところ、エリーヌの部屋の窓にその招待状が届けられた瞬間を見たのだという。
それは人間ではなく、鷹のようであったと──
「鷹……もしかしてゼシフィード様の部下のビスリーの鷹かしら」
「おそらくはその鷹匠のビスリー様ではないかと」
「でもどうして私だけに……」
「わかりません。こちら、アンリ様に状況をお伝えしようと思いますが」
二人は顔を見合わせて少々困ったように眉を顰める。
どちらからともなくため息が漏れると、エリーヌが口を開いた。
「早馬でアンリ様に連絡しましょう。夜会はいつですか?」
「今夜です」
「今夜!? では、急いでアンリ様には招待状の内容、それから、私が参加する旨をご連絡ください」
「よろしいのですか?」
「第一王子の誘いを無下にはできないし、参加はするわ」
(そう、もう私はエマニュエル公爵夫人の身。それに傷があっては、アンリ様にご迷惑がかかるわ)
背中にあるドレスのボタンをロザリアが止めていく。
着飾った彼女は覚悟を決めるようにその金色の髪を両手ですくいあげると、一気に解き放つ。