「今日もわたくしの紅茶に毒を盛ったのです! 証拠は彼女が持っているはずです!」
「そんな、私そんなことしておりません!」

 胸の前に手を当てながら潔白を証明しようとしたとき、小瓶がカランと床に落ちた──

「え……?」

 その転がった小瓶をゼシフィートの細い指先が拾い上げて側近を呼ぶ。

「チャール!!」
「はい」
「これは何の液体だ?」
「ちょっと失礼いたします…………この色と刺激臭、おそらく……」

 そうしてチャールは胸元から出した布にその液体を少し垂らすと、みるみるうちに布が解けていった。
 その様子を見て彼は冷たい声で言い放った。

「毒です」

 その声を聞き、聴衆が騒ぎ立てる。

「皆、静まれっ! この女は自らの嫉妬に駆られ、親友を手にかけようとした! そんな大罪人を許してはならぬ!」
「待ってくださいっ! それは私の持ち物では……」」
「ないと申すか?! 今ここで、この場でお前の胸元から落ちたというのに。ふふ、どうやら性根も腐っているらしい」

(違うのに……! なんで、なんでっ!!)