アンリはそう言いながらぐいっとエリーヌを自分自身に近づけて肩を抱く。

「妻に手を出したら許しはしないからな」

 そう言ってふふ、っと冗談っぽく笑った。
 花びらが風で舞い上がり、ひらひらと町中を包み込む。

 アンリはそっとエリーヌの手を握る。

「アンリ様……」

 エリーヌが彼のほうを見上げると、照れ臭そうに目を合わせずに前を向いていた──