エリーヌはその女性に見覚えがあった。
 なぜならば先日ルジュアル細工を売っていた店主だったからだ。

「店主の方!」
「ええ、先日はお買い上げありがとうございました」
「やはり、あれは町長のお店のものだったか」

 二人の胸元にはそのネックレスが光っており、町長は嬉しそうに微笑んでいる。

「ささやかながら、わたくしたち皆からお祝いの品をお渡ししたく集まりました」
「そうだったのか、皆仕事で忙しいところ悪いな」
「いえ、坊ちゃんがご結婚とあらば皆集まります! それに、お二人にお祝いの言葉を言いたかったのです」

 エリーヌのもとに小さな子供がやってきて、花を手渡す。

「エリーヌさま、おめでとうございます!」
「ありがとう」

 しゃがんで花を受け取ったエリーヌは、アンリにそれを見せる。
 ふふっと目を合わせて笑い合うと、その雰囲気に町人たちも皆和んで笑顔を見せた。

「皆、本当にありがとう。私が結婚するなんて、私が一番びっくりしているんだ。エリーヌはとても素敵な女性だから、皆もよろしく頼む。だが……」
「え……?」