女がそれを受け取り宛名を見ると、エリーヌ宛になっていた。

「なぜエリーヌ様に?」
「わかりません。しかし、我々が勝手に開けることはできません。折を見てエリーヌ様にお渡しいただけますか?」
「かしこまりました」

 それでは、と言った様子で女が去ろうとすると、男が声をかけた。

「もう一つ、例の件は明日実行ということになりました」
「明日? いきなりですね」
「なにやら都合があるようでして、なんとかこちらはアンリ様を連れて行きますので、先にエリーヌ様をお願いできますか?」
「かしこまりました。馬車で先に向かいます」
「ええ、よろしく頼みました」

 女は男に向かって礼をすると、そのまま暗闇に消えていく。
 そうして男もまた仕事に戻っていった──