二人は魚介メインのあっさりとした食事に手を付け始める。
 夏も本格的になってきたため、スープも冷製でひんやりと冷たい。
 ふとアンリのほうへと視線を向けると、彼は白ワインを口にして楽しんでいた。

「お酒、お好きですか?」
「ああ、普段はあまり飲まないんだけどね。仕事ばかりで最近は特に」
「そうでしたか」

 すると、アンリはシェフに何か合図をして持って来るように依頼をした。
 しばらくしてテーブルに運ばれてきたのは、透明なノンアルコールのシャンパンだった。

「もしよかったら、一緒に乾杯してもらえないだろうか?」
「ええ、私でよければ」

 そう言ってそれぞれグラスを持つと、コンと合わせて乾杯する。

(あ、美味しい……)

 ブドウ風味の味わいでほんのり甘いが、すっきりとしていて今日の食事に合う。

「遅くなったけれど、エマニュエル家の当主として君を歓迎するよ」
「ありがとうございます。お世話になります」

 律儀に挨拶をする彼女にアンリはさらに好感を持つ。
 そして、今叶えられない将来の夢として問いかけた。

「いつか君が大人になった時に、一緒に付き合ってくれるかい?」