「ああ、そういえば壊れておりましたね。業者に依頼しようと思っておりました。お怪我はございませんでしたか?」
「あ、私は大丈夫です!」
「それはよかったです。エリーヌ様、夕食のお時間ではございませんか?」
「あっ! そうでした! いってまいります」
「今日は先程アンリ様も向かわれましたので、ぜひお楽しみください」
「本当ですか?! 行ってきます」

 そうしてエリーヌは礼をした後にディルヴァールに背を向けて行く。

 ディルヴァールはエリーヌがダイニングに向かったのを見届けると、先程の壊れた壁を見つめる。

「いつかあの方が外に出られる日が来るといいのですが……」

 彼の呟きを聞く者は誰もいなかった──


 エリーヌは急いでダイニングに向かうと、ディルヴァールが言っていたように窓際の席にアンリの姿があった。

「アンリ様」
「エリーヌっ!」

 お待たせいたしました、と謝りながら席に着く。
 二人が揃ったのを確認すると、シェフとロザリアが連携して料理を準備していく。

 今夜は魚がメインの食事で、その他にもスープやサラダなどが並んでいる。

「それではいただこうか」
「はい!」