私は何も不自由はありませんので、ご心配せずお仕事に没頭なさってください。
万一、私にできることがあればいつでもお声がけください。
エリーヌ
******************************
手紙をそっと閉じると一つ大きく息を吐いて、その手紙を愛おしそうに撫でる。
「本当に君は……自分を低く見積もりすぎだよ」
そう言って彼は机の一番上の引き出しにそっと入れる。
綺麗でまっすぐな字は彼女が手紙を書き慣れている証。
だが、ところどころ書く内容に迷いがあったのか、インクの滲みが気になった。
(私が出た国家式典というと、建国300周年のあれか)
当時の事を振り返りながら、彼には一つ心に残っていることがあった。
(あの時の歌……あれは確か……)
澄んだ歌声を式典会場に響き渡らせた少女の歌声は、何かどこか悲しそうで寂しそうな声だった。
(そう、あの少女は金髪で……華奢な……)
アンリの脳内でその少女とエリーヌの姿が重なる。
もしかして、あれは彼女だったのかもしれない。
そう思い、彼は急いでディルヴァールの元へと向かった──
万一、私にできることがあればいつでもお声がけください。
エリーヌ
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手紙をそっと閉じると一つ大きく息を吐いて、その手紙を愛おしそうに撫でる。
「本当に君は……自分を低く見積もりすぎだよ」
そう言って彼は机の一番上の引き出しにそっと入れる。
綺麗でまっすぐな字は彼女が手紙を書き慣れている証。
だが、ところどころ書く内容に迷いがあったのか、インクの滲みが気になった。
(私が出た国家式典というと、建国300周年のあれか)
当時の事を振り返りながら、彼には一つ心に残っていることがあった。
(あの時の歌……あれは確か……)
澄んだ歌声を式典会場に響き渡らせた少女の歌声は、何かどこか悲しそうで寂しそうな声だった。
(そう、あの少女は金髪で……華奢な……)
アンリの脳内でその少女とエリーヌの姿が重なる。
もしかして、あれは彼女だったのかもしれない。
そう思い、彼は急いでディルヴァールの元へと向かった──