「おや、見かけない顔だね。ロザリアが連れているってことはアンリ坊ちゃんのとこのお客人かい?」
「いいえ、彼女はアンリ様の奥様ですよ」
「まあっ! ご結婚なさったんかいっ!」
「ええ、まあ本人はいつものように大ぴらに自分のことは言わないお人ですので、ご報告が遅れて申し訳ございません」
「いいや~! 坊ちゃんに奥様が出来たら、それはもう町みんなで大喜びだよ。奥様はどこかのご令嬢ですか?」
「はい、ブランシェ家のものでした」
「それはっ! ご無礼をお許しください」
「とんでもないです。あの、このネックレスって二つありますか?」
「ん? ええ、色違いでしたら……。ピンクとブルーの二色です」

 工芸品屋の店主から商品を見せてもらうと、じっとそれを見つめてみる。
 二つのそれはペアになっており、合わせると花の形の縁ができるようになっていた。

「あの……これ、一つずついただけませんか?」
「ええ、もちろんです。坊ちゃんにですか?」
「はい、喜んでくださるといいのですが」

 そんな会話をしながら、雑貨屋を後にする。

「アンリ様への贈り物を買いたかったのですね」