彼女のこちらを認識したようでお辞儀をしている。

(お辞儀をし返すのも仰々しいか。手をあげてみるか)

 右手で挨拶をすると、彼女も気づいたようだった。

(可愛い……ちょこんとしているその様子も、仕草が可愛い。可愛い……)

 あまりの一目惚れぶりに語彙力をなくしていることに気づかないアンリは、そのまま心の中で彼女に愛を囁き続ける。
 少しして、彼女は会釈をして去って行った──

 今度はきちんと挨拶をして、話をしたい。

(彼女のことをもっと知りたい)

 アンリはその植物園から外の世界に出ようとしていた。
 それにしても何度もアンリには思うことがあった。

『こんなに可愛い人と結婚していいのか?』

 そんな風に感じていたアンリだった──