少しだけ不安そうにしている彼を、愛しいと思った。

(ああ、なんて可愛い人で、素敵な人なんだろう)

「アンリ様」
「ん?」

 名を呼ぶと同時に伸ばされた手は、彼の衿元を掴んで引き寄せた。
 まるでハプニングのようにちゅっと唇が触れ合うと、彼女は微笑む。

「だーいすきです! アンリ様! あなたのもの、私がいただきます!」

 そうしてもう一度唇が重なった。


 その日、蕾をつけていた花がようやく花を咲かせた。
 決して大きくはないが、純白で美しいその花は、二人の想いが通じた証のようだった──