何度も角度を変えて重なるそれに、エリーヌは呼吸を乱される。

 しかし、今日ばかりは不満を言わねばとエリーヌは強い力で押し返した。

「──っ! エリーヌ?」
「アンリ様は本当に私のことが好きなのですか?」
「へ?」
「だって、その……好きとか、愛してるとか、そういうこと、きちんと言われてないです。やっぱり私たちは政略結婚の関係で、私はお飾りの妻でしょうか?」

 俯いて少し涙目になりながら訴える彼女に、アンリは思わず否定する。

「違う! その、えっと……」
「ふふ、冗談です。意地悪いってみたかっただけです。あ、私、お茶会の時間がありますから、もういきますね」

 そう言って彼の腕をするりと抜けたその時、腕をぐっと掴まれた。
 その腕を優しく引いてエリーヌを自分のほうへと向かせると、彼女の頬に手を当てて囁く。

「好きだよ」
「──っ!」
「大好き。すごい、もう止まらないんだ。エリーヌのこと、可愛くて可愛くて、大事にしたくて。嫌われたくなくて」
「アンリ様……」
「お飾りなんてさせない。俺はエリーヌだけ。エリーヌも俺だけを見て」

 そういってエリーヌの答えを待つ。