「俺の妻を傷つけたのはお前だ。お前の自業自得でなっているのを自覚しろ。さあ、本番はこれからだ」
「──っ!!」

 ちらりと視線を送った先をゼシフィードも見る。
 そこには彼が最も恐れる存在がこちらに向かってきていた──

 聴衆はその姿を見て恐れおののき、跪く。
 開けられた道をヒールをかき鳴らして向かってくる。

「お待ちしておりました、王妃様」
「久しぶりね、アンリ」

 そう、彼女こそこの国の王妃であり、エリーヌとロラの憧れの伝説の奇跡の歌手──

「ジュリア様……」
「ふふ、エリーヌ。素敵な歌声だったわ、今度じっくり聞かせてちょうだい」
「恐れ入ります、王妃様」

 ジュリアは怯えて膝を震えさせているゼシフィードのもとに向かうと、その右手で彼の頬を勢いよくビンタする。

「──っ! 母上……!」
「ゼシフィード、私の留守中にいろいろやってくれたらしいじゃないの?」
「そ、それは……!」
「婚約破棄に女の子を監禁して、さらに王太子としての職務怠慢、王家という権威を利用して好き放題」
「あ、あ……」