「教えてください。あの花の名を」
「──スイートアリッサム」
「すいーと?」
「小さな白い花を多くつける花だよ。可愛いらしくて、まるでエリーヌのよう」
「褒めてくださるのですか?」
アンリは少しだけ顔を逸らしながら、小さな声で肯定する。
そんな夫の初々しい愛情表現がエリーヌには心地よかった。
「アンリ様、その薬、飲みます」
「……どうしても?」
「はい、私はもう一度、歌いたいです。誰かの心を揺さぶる歌を、忘れていた愛の歌を歌いたい……」
その言葉に静かに頷くと、テーブルのほうへと向かって小瓶をエリーヌに差し出す。
「あれからなんとか安全性を確認できないか、試してみた。今のところ害は発生していない。万一に合わせて吐き出させる準備もしている」
「はい、ありがとうございます。それだけあれば十分です」
「いいかい、一滴でいいからね」
こくりと頷いて小瓶の蓋を開けると、一つ息を吐いて一滴舌の上に垂らした。
そうしてゆっくりと喉に染み渡らせる。
しばらくの間二人は経過を見るが、彼女の様子に変化はない。
エリーヌはアンリと目を合わせると、目を閉じて息を吸った。
「──スイートアリッサム」
「すいーと?」
「小さな白い花を多くつける花だよ。可愛いらしくて、まるでエリーヌのよう」
「褒めてくださるのですか?」
アンリは少しだけ顔を逸らしながら、小さな声で肯定する。
そんな夫の初々しい愛情表現がエリーヌには心地よかった。
「アンリ様、その薬、飲みます」
「……どうしても?」
「はい、私はもう一度、歌いたいです。誰かの心を揺さぶる歌を、忘れていた愛の歌を歌いたい……」
その言葉に静かに頷くと、テーブルのほうへと向かって小瓶をエリーヌに差し出す。
「あれからなんとか安全性を確認できないか、試してみた。今のところ害は発生していない。万一に合わせて吐き出させる準備もしている」
「はい、ありがとうございます。それだけあれば十分です」
「いいかい、一滴でいいからね」
こくりと頷いて小瓶の蓋を開けると、一つ息を吐いて一滴舌の上に垂らした。
そうしてゆっくりと喉に染み渡らせる。
しばらくの間二人は経過を見るが、彼女の様子に変化はない。
エリーヌはアンリと目を合わせると、目を閉じて息を吸った。